プラスチック包装の功罪 ―プラ包装は環境に悪いのか?―
プラスチック包装とは、プラスチック製の容器やフィルム・緩衝材などを用いた包装形態を指します。
プラスチックとは主に石油を原料とした高分子物質で、合成樹脂とも言います。
ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)、PETなど多くの種類があり、熱や圧力を加えることにより成形加工することができます。
それぞれの素材の特徴を生かした製品に加工され、包装容器や緩衝材にも多く使用されています。
脱炭素社会の実現が近年世界的な潮流となったことで石油を原料とするプラスチック製品が矢面に立たされています。
日本でもレジ袋は使用量削減のためスーパーやコンビニレジで有料化されました。
包装容器・緩衝材なども環境面からプラ素材から紙などの素材に切替える会社も増えてきています。
果たしてプラスチック包装は本当に環境に悪いのでしょうか?
もくじ
プラスチック容器の種類
プラスチック製の容器と緩衝材には次のようなものがあります。
・飲料用のペットボトルをはじめ液体を詰めるボトル、チューブ、キャップなど。
・食品や弁当のトレーや卵や豆腐のパックなど
・カップ麺やプリンなどのカップ容器
・ショッピングバック・ポリ袋などの袋
・魚箱などの発泡容器、発泡素材の緩衝材
・プラスチックのコンテナ、パレットなど
食品容器も多いですが、様々形状のものが様々用途に使われていることがわかります。
段ボールの板に商品を載せシュリンクフィルムで固定し箱詰めする、紙器箱の外側をフィルムで包むなど、他の素材と複合的に使用する場合も多くみられます。
プラスチックから
環境問題への配慮からプラスチック素材を紙など他の素材に包装を変更する企業も増えてきています。
■プラスチックの緩衝材 ⇒ 紙緩衝材
■プラスチックのショッピングバック ⇒ クラフト紙素材
■OPP梱包用テープ ⇒ 紙基材の梱包用テープ(ガムテープ)
などの例があります。
それぞれ企業のブランドイメージの向上に寄与しているといえます。
プラスチックは石油が原料であり、紙素材に比べ環境に良くないイメージがあります。
プラスチック包装は本当に環境に悪いのでしょうか。
いくつかの例で考えてみます。
PETボトル
もともと飲料の容器はガラス瓶から缶やPETボトルに推移してきた経緯があります。
ペットボトルはガラス瓶に比べ安価、かつ軽くて丈夫なため急速に普及しました。
日本酒、瓶ビールなどでは現在も瓶容器が使用されています。
ガラス瓶はリユースでき、イメージでは環境に優しいと思われています。
しかし、ガラス瓶容器はPETボトルより環境負荷が高い可能性も考えられます。
・ペットボトルは圧倒的に軽いので、輸送総重量はガラス瓶にくらべ大きく減る。
そのためトラックの燃料消費も少なく輸送時のCO2排出量は低減できる。
・ガラス瓶は破損しやすいため、輸送時には専用のプラケースや材質の良いダンボールを使用する。
PETボトルは破損しにくいため低材質のダンボールで輸送可能。
・PETボトルもリサイクル可能な容器。ガラス瓶もリユースできるが回収・洗浄・再出荷する際、再度燃料の消費が発生する。
環境面からはこのような見方もできます。
品質保持が難しい日本酒は現在もガラス瓶が主流であり、ビールはアルミ缶に移行しましたが、飲食店などで需要もあるため瓶も使用されています。
飲料容器は容器と内容品との適合性やコストも含め、PETボトル、紙製容器
スチール缶、アルミ缶、ガラス瓶など適材適所で使われているといえます。
緩衝材
昔は家電の梱包は発泡成形品が多く使われていました。
現在は段ボール等の紙製品を加工したものが主流となっています。
環境面もありますがコスト面や保管スペース、廃棄の問題からも発泡成形品を用いた緩衝設計は少なくなっています。
インターネット通販の普及で商品と段ボール箱の隙間を埋める緩衝材を目にすることが多くなっています。
緩衝材もボーガスペーパーなどの紙緩衝材が使われることが多くなってきました。
発泡緩衝材や気泡緩衝材に比べボーガスペーパーは巻取りロールのため輸送時はサイズが小さく、保管場所もとらないという利点があります。
デメリットとしてはカットして丸めるという作業が必要になってきます。
紙素材の方がプラスチック緩衝材より環境に良いのでしょうか?
エアー緩衝材という商品は、フィルムに空気を充填して緩衝材をつくります。
機械を使うため初期費用はかかるものの、フィルム自体が薄いため、他の素材(紙を含む)の緩衝材よりも使用重量は圧倒的に少なくなります。
重量単位での製造時CO2排出量のデータが手元にありませんので、正確とは言えませんが他の緩衝材より環境負荷は低いと思われます。
また、エアー緩衝材には自然由来の原料を用いている製品もあります。
このように、プラスチック緩衝材でも環境負荷の低い製品は存在します。
衛生面の問題
プラスチック容器が無くならない理由には、コスト面とともに衛生面の問題もあります。
日本は高温多湿な気候であり、食中毒をはじめとする衛生面の問題からプラスチック製の食品容器や食品フィルムは欠かせません。
プラスチック製品は大量生産できるため安価で、使い捨てに適した素材です。
腐敗せず、ガスバリア性もありますので衛生的です。
豆腐などの安価な食品をリターナブル容器で販売しようとしても衛生面・コスト面から現実的でありません。
スーパーやコンビニでレジ袋が有料化されましたが、一部の飲食店チェーンでは引き続き無償提供しています。
環境面からエコバックが推奨されることが多いですが、衛生面では懸念があるということです。
以前、割り箸が環境面から批判されていた時期がありました。
マイ箸(飲食店で持参した箸を使用する)ブームというものが存在しましたが、現在は衛生面の問題で廃れています。
割り箸の使い捨ては良くないという風潮でしたが、割り箸の原料は間伐材(森林に生えている木々の混み具合に応じて、樹木の一部を伐採するときに出る廃材)であり、森林資源を浪費するものではありません。
イメージ先行でレジ袋や割り箸といった特定の製品が批判される現状は如何なものでしょうか。
プラスチックの海洋投棄が問題となっていますが、その9割以上は漁網です。
プラスチックストローやレジ袋などの一部の製品を批判、削減してもプラスチック製品の総量からすると微々たるもので問題解決にはなりません。
まとめ
環境に優しいとされている紙素材も製造時には燃料が使用されています。
詳細なデータが無いため断言できませんが、製品を廃棄したときに発生するCO2量だけでなく、生産時や輸送時に使用する燃料やリサイクルに要する燃料なども含めて比較するとプラスチック製品の環境負荷はそれほど高くない可能性があります。
また、プラスチック容器でもマテリアルリサイクル(廃棄物を新たな製品の原料として再利用するリサイクル方法)が可能な素材もあります。
マテリアルリサイクルされなくても最終的にはサーマルリサイクル(廃棄物を焼却するリサイクル方法)されて熱エネルギーとして回収されます。
他の化石燃料と同様に効率的な装置で燃焼されればCO2の排出も抑えられます。
資源枯渇の観点から石油を節約して上手に使うべきという意見は尊重しますが、石油化学製品というだけで環境負荷が高いとはいえません。
プラスチック製品にも利点は多くあり、目的に応じて使い分ければ良いと考えます。
イクソブ株式会社は様々な素材の包装資材・緩衝材を扱っています。お客様のご要望に合わせた商品をご提案いたします。是非お声掛けください。