段ボール箱の目方向、紙巾・流れとは?

2022.10.12

基礎知識

段ボール箱の目方向、紙巾・流れとは?

段ボールには目方向(段目)があります。

 

段ボール箱は、板状の段ボール(段ボールシート)を加工して製造されます。段ボールシートの段目に並行な方向を「紙巾(或いは単に巾)」反対方向を「流れ」と言います。(下図参照)

 

この場合の紙巾(巾)は、箱寸法を表すときの「長・巾・高さ(深さ)」とは別の意味です。

紙には目方向(縦目・横目)があります。
段ボールの段目方向(「紙巾」「流れ」)は、紙の目方向と同様に意味がありますが、段ボールの場合は「段」があることに特性があります。

 

段ボール箱の設計には「段目」の指定が重要になります。

 

図1、段ボール、目方向

段ボール箱の目方向とは

段ボールシートには目方向があります。
通常、A式の箱に加工する場合の目方向は図②となります。

 

図2、通常の段ボール 流れ 紙巾 印刷機の通し方向

 

特殊なもので無い限り図③のようにはしません。(図③を「逆目」といいます)

 

図3、逆目段ボール 流れ 紙巾

 

このような目方向にするのには理由があります。
段ボールシートを構成する中芯は段を形成します。

 

段は紙巾方向に対して力が加わった場合、建築物の柱や壁の役割をして強度を保ちますが図④)、流れ方向に力が加わると段目方向に沿って折れやすいという特性があります図⑤)。

 

図4、通常の段ボール 加重に強い図5、通常のダンボール 目方向に添って折れてしまう

 

段ボール箱は保管する場合、上下に積み重ねることが多く、下層の箱には荷重がかかるため、図②のような目方向指定が有効となります。
また、A式段ボールを製造する機械では、逆目の箱が作りづらいという理由もあります。

 

簡単に説明すると、段ボール箱の上下罫線は段ボールシートを貼り合わすとき同時に入れますが、逆目の場合はこの時入れることができません。別の機械で罫線を入れねばなりません。

 

また箱に加工するとき、機械の通し方向は図②の通りですが、逆目の場合
段ボールシートを機械に投入する際に流れ方向に力が加わり、シートが折れやすくなります。

 

抜きケースの場合は、罫線も抜き型で入れ、シートを機械に投入する機構も違うため、この限りではありません。
抜きケースはなにを優先するかによって目方向を設計します。

段ボール付属品の目方向

段ボールシートをカットしただけの板状のものを段ボールパット(或いは単にパット)といいます。

 

パットも底敷きや中間パットに使われる場合には目方向を気にする必要はありませんが、立仕切りとして使用される場合は段ボール箱と同様に上下方向を紙巾とすることにより耐圧強度を上げることができます。

 

図6、敷パット・中パット、商品を2段積む場合図7、立仕切 立仕切りとして使用 目方向指定あり

 

この場合箱の深さより仕切りが低いと天地に隙間が出来て強度アップの効果はありません。
組仕切りも基本的には立仕切と同様な目方向で制作し強度を上げますが、内容品によってはそうしない場合(ビン等の緩衝材として使用)もあります。

 

図8、組仕切 目方向指定あり 組み合わせる図9、組仕切2 底パット 仕切りの高さが箱より浅い 緩衝設計の目的

 

段ボールの内側に帯状のパットを入れる「胴枠」という使い方も耐圧強度のためです。
胴枠を使用した梱包は最近見なくなりました。

 

図10、胴枠 実際の使用図

紙巾・流れの表記

段ボールでは、紙巾・流れの表記は必ず紙巾表記を先にします。単位はmm(ミリメートル)です。
図⑪のパットの場合500mm×250mmと表記するのが段ボールメーカーのルールです。

 

図11、段ボール 500m/m 250m/m

 

段メーカーに段ボールシートを発注する場合も紙巾×流れで指示します。

 

余談ですが、段ボール業界の商習慣で実寸法での発注はできません。
段ボール原紙の紙巾で発注することになります。

 

段ボール原紙の紙巾は原紙メーカーによって異なりますが、およそ1000mm~2700mm範囲、50mm単位で製造されます。コルゲーターで貼り合わせするときに箱の実寸で小断されます。

 

たとえば実寸法、紙巾600mm×流れ1200mmのシートを1000ケース分発注する際
1850mm×1200mm 334枚と発注します。
1850の紙巾から3枚の材料がとれます(3丁取り)ので1000枚÷3=333.3枚≒334枚と発注します。
これを全板枚数と言います。

 

この際、600*3丁=紙巾1800mmなのですが、コルゲーターで3枚の紙を貼り合わせるとき多少紙が蛇行しサイドがズレます。
両サイドをシングルフルートで各10mm程度カットします。(化粧断ち)そのため1800mmのひとつ上の紙巾で購入することになります。

 

図12 ダンボール シート 3丁取りの説明図

 

実際に使わない落代部分も含めたかたちで材料代はかかっています。
したがって内寸法を少し見直すことで、紙巾が一つ下がれば材料代のコストダウンになります。

 

紙巾・流れの順番は業界内では当たり前のことですが、ユーザー側はそこまで知らない場合が多いため、段ボール箱を設計する際に目方向を確認することは大切です。

目方向による折れやすさ

段ボールに入れる折り目のことを罫線といいます。

 

段には山部分と谷部分があります。
段目に並行に入れた罫線は山部分に入る、谷部分に入るかでズレが生じ、正確な寸法が出づらくなります。(BF以下の薄い材質の場合は誤差が出にくい。)

 

また、先に述べたように折り曲げる際に罫線を入れた場所と違う谷の部分から折れてしまう場合もあります。

 

図13、山部分に罫線をいれても、谷部分から折れてしまう

 

反対に段目と垂直に入れた罫線は、折りやすく寸法精度があがります。

 

図14、精度が出やすい 段目に合わせて垂直に罫線を入れる図

 

 

ビールなどの飲料缶を包装している段ボール(ラップアラウンド形式)は、内容品の缶によって耐圧強度は保証されるので、段ボールに強度は要求されないため、取り都合(材料面積が最小になるような経済的な設計)が優先されます。

 

このように、罫線入れのパットや抜き箱の設計の際は強度を優先するか、折れ制度を優先するか、材料の取り都合を優先するかによって目方向の指定は変わってきます。

 

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まとめ

段ボール箱の目方向、紙巾・流れについて解説しました。

 

A式ケースでは特殊な場合を除いては、目方向は決まってきますが、抜きケースの場合は何を重要視するかによって目方向を設定します。

 

紙巾×流れの順で表記するのは段ボール業界のルールですが、世間一般に周知されているわけではありません。
製作する側が確認することが必要であると同時に、お客様のニーズによっては設計変更のご提案も必要となってきます。

 

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