2021.05.17
基礎知識A式段ボールとは? -A式段ボールのメリット・デメリット-
A式段ボールとは、段ボール箱の形状のひとつで、代表的な形式です。
A式段ボールは、いわゆる「みかん箱」タイプの段ボール箱です。
段ボール箱には様々な形状があり、内容品や用途によって使い分けられています。
段ボール箱はその形状によって加工方法が異なり、製造コストも変わってきます。
A式段ボールは製造コストが安いだけでなく様々な利点があり、広く使用されています。
この項では、A式段ボールのメリットを解説していきます。
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もくじ
A式段ボールとは?
A式段ボールとは、段ボール箱で広く使われている形状です。A-1式とも言います。
いわゆる“みかん箱”タイプの箱です。
天地面をテープ等で封緘して使用します。
A式段ボールは、JIS規格(日本工業規格)では、JIS Z 1507の0201形と規定されています。
A式以外のB式、C式、その他の形状については別項で触れていきたいと考えています。
A式段ボールの構造について
A式段ボールを展開すると下図のようになります。
A式段ボールは段ボールシートに縦横の折り目(罫線)を入れ、蓋(フラップ)部分とのりしろに切り込み(スリット)を入れる(落とす)という単純なシンプルな形状であることが分かります。
A式段ボールは、シンプルな構造であるため加工が容易で、広く採用されています。
A式段ボールのメリット・デメリットとは?
A式段ボール箱には、様々なメリットがあるため広く採用され、大量に流通しています。
そのため、一般生活のなかでもよく見かけられ、最も馴染み深い段ボール箱の形式と言えます。
A式段ボール箱のメリット
Ⅰ.コストが安い。
Ⅱ.幅広い内容品に対応している
・他の形状に比べ小さいものから大きなものまで対応でき様々な寸法で
製作できます。(最大・最小は加工機械により制限あり)
・容器に求められる物流機能(輸送・仕分け・保管)を満たしています。
・商品の保護機能がある外装箱に適しています。
そのため、食品、衣料品、工業製品など様々な製品の梱包に使用されています。
段ボール箱の機能についてはこちら
Ⅲ.大量でも少量でも梱包対応
・A式段ボール箱は、手作業で箱組みし、封緘することもできます。
また、大量に使用する場合は専用の機械で箱組みや封緘することも可能です。少量でも大量でも梱包や出荷作業に対応が可能です。
Ⅳ.省スペース
組まずに平の状態で保管できる段ボール箱は多いですが、A式は畳んで
保管できるため保管面積としても少なくなります。
A式段ボールの最大のメリットはⅠのコストです。
A式の段ボールは高速生産可能で短時間に大量生産できるためコスト面で有利です。
A式段ボールの製造工程と合わせて、後ほど詳しく述べます。
A式段ボール箱のデメリット
⦁ 高級感には欠ける。(素材感・広く流通)
A式ケースはコストを優先する場合がほとんどです。
美粧印刷を施したり素材に光沢のある紙を使用することにより高級感を出すことはできますがコストとのトレードオフとなります。
また厚い材質(AF、WF)を使用した場合、断面には段ボールの素材感は残ります。
⦁ 箱を組み立てたり、封緘する手間がかかる。
N式のような組み箱よりは手間がかかりませんが、必ず箱組みし、天地をテープ等で封緘する手間は発生します。
また、他の形状の段ボール(差し込み式など)は設計によりテープ等での封緘部分を減らすことができます。
A式段ボールの製函機(箱組みする機械)や封緘機はありますが、単一商品(飲料缶やカップ麺など)を大量に高速梱包するラインにはスピードで勝るラップアラウンド形式が多く採用されています。
高速の包装ラインでは他の形状の方が有利です。
⦁ 内装箱(小さな商品の包装)には適さない。
内装箱は寸法によって後述するFFGなどの段ボール製造機械で対応できず、抜き加工になる場合があります。
もちろん抜きでもA式形状は加工できますが、コスト的には他の形状に比べそこまで優位性は無く、内装箱に要求される美粧性や機能性が優先され他の形状が採用される場合が多いです。
このようにA式段ボールには、メリットとのトレードオフでデメリットもあり
ます。
A式段ボールのコスト優位性とは?
A式段ボール箱が採用される最大のメリットはコストが安いことです。
段ボール自体コスト的にメリットがある素材です。
そのなかでもA式段ボールはなぜ他の形式に比べてコスト的に有利なのでしょうか?
それは、A式段ボール箱の加工方法に秘密があります。
製造工程におけるA式段ボールのメリット
①段ボール加工機械で高速・大量生産できる。(製造コストダウン)
②抜き型費用がかからない。
③抜き型をセットする時間がかからない。
④箱を製造するのと同時に印刷を入れることができる。
⑤箱寸法に自由度がある。
~③までが他の形式に比べて製造コストが安い理由となりますが、主な理由は①の高速生産できるため、短時間に大量生産が可能であることに尽きます。
A式段ボールと他の形式の加工方法の違い。
製造工程におけるA式段ボールのメリットを説明するために“抜き”という加工を説明します。
A式段ボールの製造工程(前述①の説明)は後述します。
段ボール箱には様々な形状があります。
A式以外のほとんどはその形状に加工するため“抜き”という工程が必要です。
“抜き”工程では段ボールシートを抜き型(木製の板に金属製の刃物を埋め込んだもの)に押し当てて、打ち抜きます。
段ボールシートを打ち抜くことでどのような形にもできます。
缶ビールが24本入っている段ボールを見ますと、形式はA式と同様ですが蓋の角など曲線になっていると思います。
これは抜き加工で製造されています。
抜き加工の機械には平盤ダイカッターとロータリーダイカッターがあります。
平盤ダイカッターは段ボールシートを1枚ずつ給紙し、抜き型を上下運動させ、プレスして打ち抜きます。
1枚ずつ位置合わせするので機械とはいえ、スピードは遅くなります。
ロータリーダイカッターは抜き型を回転させることで段ボールシートを打ち抜きます。
平盤ダイカッターより高速で生産できます。
このように、抜き工程の場合、平盤でもロータリーでも抜き型の費用が発生します。
ロータリーダイカッターの抜き型は金属ロールにセットできるように湾曲させた木に刃物を埋め込み製作しますので、抜き型にコストがかかります。
形状やサイズにもよりますが、平盤であれば数万円でできる抜き型がロータリーの型だと数十万円する場合もあります。
従って、ロータリーの型を使用する場合、継続する商品か数量が見込まれる商品でないと抜き型代が償却できないという問題が発生します。
また、機械に抜き型をセットする場合、平盤・ロータリーとも数十分単位で時間がかかります。
そのため、1ロット100枚であれ、数万枚であれ見積もり時には一律のセット賃を加算するのが普通です。
これを台数計算といいます。
何万枚の製造ロットであれば数千円のセット賃であっても1枚辺りの単価はあまり変わりませんが、数百枚のロットであれば1枚当たり数十円以上になります。
以上のように、抜き工程がある段ボールに関して“抜き型代がかかる”、“抜き型をセットする時間がかかる”ためにコストがA式よりかかることが分かります。
A式段ボールの加工方法について
A式段ボールの構造の項で簡単に説明しましたが、段ボールシートに縦横に折れ線(罫線)を入れ、糊代、蓋となる部分に切込みを入れ、糊代を貼り合わせたものがA式段ボール箱です。
A式段ボール箱はこのように直線で構成されているため、自動化された段ボール製造機械で高速に製造することができます。
A式段ボールを製造する機械は、プリスロ(プリンタースロッター)とグルア(糊張り機)またはその2つが一体になったFFG(フレキソフォルダーグルア)という機械で製造されます。
FFGは横罫線の入った段ボールシートを投入すれば、A式段ボール箱になって排出されるという機械です。
そのスピードは最新機種で1分間に400枚(サイズにもよる)を生産するという超高速マシンもあります。
FFGの仕組みを簡単に説明します。
段ボールシートを製造するコルゲーターという機械で横罫線は入った状態で入荷します。
機械にセットされた段ボールシートは印刷ロールを通った後、スロッターユニットで縦罫線を入れると同時に切り込み、のりしろの溝切りをします。
金属ロール上にセットされた円形の刃物(罫線刃、切込み刃、溝切り刃)を回転させることで高速加工します。
寸法替えの際、金属ロール上を刃物が横移動することで様々な寸法(長・幅)に対応します。
切り込み刃も箱の深さに応じ縦間隔を調整します。
これにより、抜き型を用いずに様々な寸法のA式段ボールを加工することができます。
前項で、箱寸法に自由度があると記載したのはこのことを指します。
また、スロッターユニットにシートを送り込む前の印刷ユニットに印版をセットすることで、箱を加工すると同時に印刷を入れることができます。
抜き加工の場合は、印刷機直結タイプの平盤機や、フレキソロータリダイカッターなど、ひとつの機械で印刷・抜き同時にできるものもありますが、ほとんどが別工程となります。
貼りの迄ある箱ですと3工程にもなり、A式ケースがコスト面で優位なのが分かります。
このFFGも、抜きの機械と同様にセット時間はかかります。何色印刷か(印版をセットする枚数)などによりセット時間は変わってきますが、概ね5分~10分以内です。
最近の機械はほとんどがコンピューターで刃物位置等を自動でセットするため、短時間での準備が可能となっています。
抜き型をセットするより短時間で準備できます。
①~⑤でまとめたように、抜き加工のある段ボールケースよりもA式段ボールのほうが製造コスト上有利であることが分かると思います。
まとめ
これまで、A式段ボールが抜きケースより製造コスト面で有利なことを説明してきました。
ただし、製造する数量によってはA式が必ずしも安いとは言い切れません。
同じ材料寸法として、A式で50枚生産する場合と、抜きで20,000枚生産する場合では1枚当たりのコストどうなるでしょうか?
工程が違うので単純比較はできませんが、20,000枚の方が1枚当たりにした場合は安くつくことは想像できます。(型代は除外)
また、近年段ボール加工機械が進化し、A式段ボールは飛躍的に生産能力が上がっています。
段ボール加工機械も耐用年数は長く、いまだに古い機械が現役で活躍していたりもします。
生産速度が変われば1枚辺りのコストもおのずと変わってきます。
同じケース2000枚製造するのに5分でできる機械と10分かかる機械では単純計算でコストは1/2です。
段ボールの1枚当たりの製造コストを考えるとき、数量(ロット)は大きな要因となります。
イクソブ株式会社は、茨城にFFG3台、大阪にFFG2台とプリスロライン1台の計6ラインを有し、内3台は最新の機械です。
A式段ボールケースを得意とする会社です。
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